日本高血圧学会のガイドラインでは、生活習慣の修正項目として、(1)食塩制限6g/日未満、(2)野菜・果物の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取制限、魚の積極的摂取、(3)適正体重の維持、(4)運動療法、(5)アルコール制限、(6)禁煙が取り上げられています。

これらの中で最も重要なのは食塩制限です。食塩摂取量の簡便な評価法としては、尿中ナトリウム(Na)排泄量(24時間尿、夜間尿、早朝尿などを使用)を測定する方法があります。ちなみに、食塩を10g摂取した場合、尿中に排泄されるのはそのうちの約8gになります。

ところで、治療中の高血圧患者を対象にした研究で、減塩を「意識している患者群」と、「意識していない患者群」の食塩排泄量を比較すると、1g/日ほどしか差がありませんでした。つまり、患者さん本人が食塩を摂り過ぎないように注意していても十分な制限にはなっておらず、その評価は実際の食塩排泄量によりなされることが理想的です。

新生児期に6ヵ月間減塩ミルクを与えると、通常のミルクを与えた場合より15年後の血圧が低くなることが報告されています。また、「少なくとも乳児期に作られた味覚が、その後の味覚の嗜好を決める。」、「3歳児の必要食塩量は2g/日程度である。」、「Naはたいていの食物に含まれ、食塩は多くの加工食品に加えらえれているため、調理や食卓上に食塩(醤油を含め)を使用しなくても必要量は補うことができる。食塩の要求は生理的必要性でなく、味覚上からにすぎない。」等の事実から、家庭で注意して小児期から食塩制限を意識した食生活環境を整えてあげることが大事になります。