食物繊維には水に溶けてゼリー、或いはこんにゃくのような水溶性のものと、セルロースのように水に溶けない不溶性のものがあります。前者は腸内で発酵して酸を生じるため、腸を刺激して便通を促したり、腸内の有害な細菌を減らす作用があります。後者は変化せず、異物として排泄しようとするため、便の量と回数を増やします。このように重要な役割をはたす食物繊維は、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルに次ぐ「第6の栄養素」と言われるようになりました。
 食生活の欧米化と加工食品の増加から、日本人の食物繊維摂取量が減り、それと共に大腸がんが増えてきております。現在の日本人の摂取量は、必要量の1/2~2/3程度です。
 しかしとりすぎは脂質やビタミン、カルシウムや鉄の吸収を妨げ、これらの不足を招きます。消化不良から下痢を起こすこともあります。消化吸収力の落ちている人や、やせていたり、貧血ぎみ、あるいは骨粗しょう症の心配のある人は、とりすぎに注意しましょう。
 食物線維は大腸で発酵して便通をうながし、さらに消化・吸収されずに大便に出てしまう成分で、次のことから生活習慣病の予防にも有効です。
(1)よく噛むので唾液の量が増え消化・吸収を助け、虫歯予防に有効。
(2)整腸作用があり便の量を増やし便秘を解消します。
(3)糖質の吸収を遅らせ血糖値の上昇を緩やかにします。
(4)低カロリーのため食事のかさを増やし肥満予防になります。
(5)胆汁酸の排出を増やしコレステロール値を下げます。   (動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・胆石症に有効)
(6)ナトリウム(塩分)の吸収を妨げ血圧上昇を抑えます。
(7)腸の動きを活発にするので発がん物質が腸内にとどまる時間を短くさせ、排泄を早めます。便の量も増えるので発がん物質と腸の壁との接触が少なくなり、大腸がんの予防になります。