糖尿病は一度診断されると、殆どの場合、一生定期通院する必要がありますが、医師から糖尿病と言われた人のうち通院中の人が42.3%、治療を中断している人は12.7%と報告(平成14年度、厚生労働省)されています。さらに、一時的な治療中断を含めると、中断率は20~40%になります。

はたして治療中断の心理的背景とはどの様なものなのでしょうか?病院を受診するのに心理的な影響を及ぼす状況には、個人内因子【下記(2)(3)(4)】、環境因子【下記(1)(5)(6)】と対人関係因子の3つがあり、ある施設の報告によると、通院中断の要因は多い順に、
(1)「経済的な負担を考えた時」、
(2)「受診することにストレスや怒りやつらさを感じた時」、
(3)「受診しなくても大丈夫だと思った時」、
(4)「受診しても良くならない時」、
(5)「受診日に天気が悪い時」、
(6)「受診日に仕事などの用事と重なった時」
でした。

一方で、「心理的負担が減ったのに通院中断」する場合もあります。それは、糖尿病の正しい知識を獲得し、治療について相談できる同病者や医療関係者とのコンタクトにより治療に対する心理的負担が大きく和らいだ場合です。その結果、通院しなくても自分で治療できると思い込んで中断することにつながります。

日本の糖尿病患者数は増加しているものの、最近治療の進歩により糖尿病網膜症の発症が減少しています。従って、治療の中断を避けることで、他の合併症の発症・進展も阻止できることが期待できます。