口から食べた物は、咽喉(のど)から食道を通って胃に送られます。この一連の運動を嚥下といいます。咽喉は食べ物の通り道であり、呼吸時の空気の通り道でもあります。健康な状態では、食べた物は咽喉を通り過ぎるときに仕分けされ食道に送り込まれ、空気の通り道に入ることはありません。

 食べ物を上手に飲み込めないことを嚥下障害といいます。嚥下障害は(1)この通り道の仕分けが適切にできなくなっている場合や、(2)飲み込んでも食べ物が食道の入り口をなかなか通過できない場合に起こります。(1)の場合には、食べ物や唾液が誤って空気の通り道である喉頭(こうとう)から気管、肺へと入ってしまいます。この現象を誤嚥(ごえん)といい、逆流した胃の内容物を気管に吸い込んだ場合にも起こります。誤嚥して肺に食べ物、唾液、胃の内容物が入ると、肺炎を起こす可能性があります。(2)は年齢の影響、脳卒中、脳神経の病気、まれに食道の入り口の癌(がん)などによって起こることがあります。

 このようにさまざまな原因によって嚥下障害は起こり、原因ごとに治療法が異なりますので、適切な診断が必要になります。食事やお茶を飲む時によくむせる、食後に咳・痰が増える場合などにはかかりつけ医を受診してください。