狭心症や心筋梗塞という虚血性心疾患の罹患率(病気にかかる割合)や死亡率は、男性で高いという明らかな性差が存在します。これは女性ホルモンが心血管に対して種々の保護作用を有することに由来します。

したがって、女性の虚血性心疾患は閉経後に急増し、70歳で男性と同等、80歳以上で男性を上回る発症率・死亡率になります。このように、女性では虚血性心疾患が男性に比べ約10年遅れて発症しますが、高血圧、糖尿病、高脂血症を合併することが多く、これにも閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関与しています。

自覚症状は、男性では典型的な胸痛を訴えることが多いのですが、女性では非典型的症状(顎・咽頭痛、吐き気・嘔吐、腹痛、背部痛など)を訴えることが多いこと、心電図変化を認めない症例も多いことで、診断・治療が男性に比べ遅れる傾向にあります。

その他、急性心筋梗塞患者の「入院後の死亡率」は、女性が男性の約2倍と高率で予後不良です。これは、前述したように女性では高齢発症で合併症が多いことに加えて、非典型的症状による診断・治療の遅れが影響しているとされます。