これまで胃・十二指腸潰瘍などに認められてきたピロリ除菌治療が、本年2月より「ピロリ感染胃炎」でも受けられるようになりました。今回の保険適用で除菌の対象者は約3,500万人と推計されており、医療費の増加が心配されます。

一方、「ピロリ感染胃炎に関係していない胃癌」は全胃癌の1%以下とも報告されており、除菌による胃癌発症の抑制効果を考慮すれば結果的に全体での医療費は大幅に抑制できるとみられています。

現在除菌の成功率は、初回に行われる1次除菌で約70%、初回治療で無効であった場合に追加される2次除菌で90%です。除菌により、胃・十二指腸潰瘍の予防はもちろん、前述した様に胃癌のリスクも減る可能性があります。但し、胃癌は完全には予防できず、除菌しても定期的な胃癌検診は必要です。

また除菌治療が成功すると胃粘膜の胃酸分泌が回復するため、食道裂孔ヘルニアがある人は逆流性食道炎の症状が出てくるリスクがあります。高齢になるとこのリスクが増えやすく、このメリットとリスクのバランスを考えて主治医と相談の上、治療すべきか否かを決める必要があります。